源氏の物語 5 物語絵

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源氏の物語に、源氏とそれを取り巻く登場人物を思い合せると、それは平安貴族の社会である。源氏物語絵巻を鑑賞して、そこに描かれた人々がいる。絵巻物の作者のイメージに去来したのは、この絵に表わされた描画の特徴である、人物、建具に屋台、そして前栽と、そこに住まいする生活がつぶさに、ではないが、物語のストーリーに詞書が添えられて、料紙に合わせた文字のすぐれた芸術性は言葉に尽くしがたい。国内にある源氏の絵巻のすべてを、伝えられたものの全体をながめて、それはどれくらいのものであったか、断簡となってなお、見るものに平安の時代を彷彿とさせる。隆能源氏、たかよしげんじ、と呼ばれている平安時代末期の作品で、国宝に指定されている。名古屋市徳川美術館に絵15面、詞28面がる。蓬生、関屋、絵合は詞のみ、柏木、横笛、竹河、橋姫、早蕨、宿木、東屋の各帖となる。また、東京都世田谷区五島美術館に絵4面、詞9面がる。鈴虫、夕霧、御法の各帖となる。

再掲 企画展チラシ

平成27年11月14日(土)~12月6日(日)
【徳川美術館・蓬左文庫開館80周年記念特別展】
全点一挙公開 国宝 源氏物語絵巻
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 国宝「源氏物語絵巻」は、紫式部が著した『源氏物語』を抒情的な画面の中に描き出した、日本を代表する絵巻です。『源氏物語』の絵画化は、その成立当初間もない頃からおこなわれていたとみられているものの伝わっておらず、本絵巻は現存する作例としてはもっとも古く、12世紀前半に白河院(しらかわいん)・鳥羽院(とばいん)を中心とした宮廷サロンで製作されたと考えられています。

 当初は『源氏物語』全帖を一具として絵画化が試みられていたとみなされていますが、現在、尾張徳川家伝来の蓬生(よもぎう)、関屋(せきや)、絵合(えあわせ)、柏木(かしわぎ)一~三、横笛(よこぶえ)、竹河(たけかわ)一・二、橋姫(はしひめ)、早蕨(さわらび)、宿木(やどりぎ)一~三、東屋(あずまや)一・二の9帖15段分の詞書と絵、および絵が失われ詞書のみが残る絵合の1段が名古屋・徳川美術館に、阿波・蜂須賀家に伝来した鈴虫(すずむし)一・二、夕霧(ゆうぎり)、御法(みのり)の3帖4段分の詞書と絵が東京・五島美術館に所蔵されています。これらを合わせた13帖分と、諸家に分蔵される若紫(わかむらさき)・末摘花(すえつむはな)・松風(まつかぜ)・薄雲(うすぐも)・少女(おとめ)・蛍(ほたる)・常夏(とこなつ)・柏木(かしわぎ)の詞書の数行の断簡、および後世の補筆が著しい若紫の絵の断簡(東京国立博物館蔵)を含めた20帖分が、900年近い星霜を経て現在に伝えられています。

 絵は、墨描きの下図を描き、構図に微妙な修正を加えながら彩色を施し、さらに顔の輪郭や目鼻、あるいは衣や調度の文様を描き起こす「作り絵」で、一線のように引かれた目、「く」の字状の鼻、ぽつんと点じられた小さな口で面貌を表現する「引目鉤鼻(ひきめかぎはな)」や、屋根を取り去って屋内の情景が覗き込めるように描く「吹抜屋台(ふきぬきやたい)」などの描法により、『源氏物語』の世界を余すところなく伝えてくれます。詞書・絵ともに現存する19段のうち11段は、詞書中に和歌を含み、さらにこのうち六段は登場人物間にかわされた贈答歌を中心に場面が選ばれているので、物語の行間に込められた抒情性や登場人物の心の綾までもが巧みに描き出されています。

 詞書は、11世紀以来の伝統を引き継ぐ美しい連綿体(れんめんたい)で書きつづられた流麗な書風や、自由奔放で肥痩にとみ、側筆の重厚で力強い藤原忠通(ただみち)(1097~1164)にはじまる法性寺流(ほっしょうじりゅう)の書風など、当時の新旧の書の様式が混在しています。また詞書に使用された料紙には美麗な装飾が凝らされており、絵・書と一体となって王朝人たちの美意識を伝えてくれます。

http://www.tokugawa-art-museum.jp/planning/h27/07/index.html