かぜをひく

ymksk
53 風邪をひく

風邪をひくと言う。
なぜ、ひく なのか。

辞書に記述するように、ひく 動詞の用法が、名詞との結びつきで、多義にわたる。
そのなかで、出ているものを、引き込むというような、近付けて寄せるの記述をして、 

>㋒体内に吸い込む。「風邪を―・く」「大きく息を―・く」  

と説明する。

かぜをひく いきをひく と、同じ意味内容を持つと解釈している。
これによれば、息の呼吸を示す。

かぜにかかる と言う言い方をすれば、罹患という語からの用法を知る。
かぜをひく かぜにかかる このふたつを解悦して、 

>かぜの語源を日本語源大辞典(小学館)で調べると、吹く風と同じだった。それによると、古代中国で風は大気の動きであるとともに、人の肉体に何らかの影響を与える原因としても考えられていたという。このことから吹く風が運んでくる「邪気」を体の中に引き込んでしまうと、かぜという病になると考えられた。だから、「かぜをひく」というわけだ。  

と説明するものがある。






辞書の説明

ひ・く【引く/×曳く/×牽く】ツイートする Facebook にシェア
[動カ五(四)]
1 物の端を持って手近の所に寄らせる。手前に引き寄せる。
㋐たぐり寄せる。「網を―・く」
㋑手前に動かす。「サイドブレーキを―・く」
㋒矢を射放つ。「弓を―・く」
㋓(根差したものを)抜き取る。「草を―・く」
㋔(勝運などを託して)一つを選んで手もとに取る。「くじを―・く」「花を―・く」
㋕除き去る。減ずる。「三から二を―・く」「一割―・いて安く売る」
㋖こっそり盗み去る。「猫に魚を―・かれた」
㋗(ふつう「弾く」と書く)弦楽器や鍵盤楽器を鳴らす。弾じる。「ピアノを―・く」
2 引き寄せ操って目ざす所に伴う。
㋐(引き綱を取って)連れ出す。「犬を―・いて散歩する」
㋑連行する。引き立てる。「警察に―・かれる」
㋒(手を取って)導き行く。「子供の手を―・く」
㋓(長い物が)地面などに触れたまま従い動く。引きずる。「裾が―・いている」「たもとを―・く」
㋔後ろに連結して運ぶ。「犬ぞりを―・く」「荷車を―・く」
㋕誘い込む。「客を―・く」「―・く手あまた」
㋖(「惹く」とも書く)人の注意や関心を向けさせる。「同情を―・く」「気を―・くしぐさ」「目を―・く広告」
㋗書物を繰って求める語を探し出す。「辞書を―・いて調べる」「電話帳を―・く」
㋘例としてあげる。引き合いに出す。「証拠を―・く」「故事を―・く」
㋙肩をもつ。ひいきにする。「派閥で―・いて三役に据える」
3 線状に伸ばし延べる。
㋐線で描く。また線を描く。「設計図を―・く」「罫(けい)を―・く」
㋑張り広げる。「カーテンを―・く」
㋒塗り延べる。「油を―・く」「唇に紅を―・く」
㋓延べ広げる。「砂利を―・く」「なだらかな山裾を―・く」
㋔長く伸ばす。「声を―・いて歌う」
㋕糸状のものを生じさせる。「納豆が糸を―・く」
㋖特定の道筋を通じさせる。「バス路線を―・く」「ガスを―・く」「田に水を―・く」
㋗受け継いで伝わり及ぶ。「血筋を―・く」「学統を―・く」
㋘あとに余波が続く。「航跡を―・く」「わだかまりが尾を―・く」
㋙贈り物をする。
「布施に馬を―・き給へりける」〈今鏡・七〉
4 出ているものを近づけ寄せる。
㋐自分の側に動かす。「あごを―・く」「右手を先に―・く」
㋑吸いつけようとする働きをもつ。「磁石は鉄を―・く」
㋒体内に吸い込む。「風邪を―・く」「大きく息を―・く」
㋓取りのけて後方にかたづける。「膳を―・く」
㋔後方に退かせる。「敗れて兵を―・く」
㋕(湯をくんで)浴びる。
「御湯―・かせ奉る」〈平家・一〇〉
5 (「退く」とも書く)出ているものが遠くへ去る。しりぞく。
㋐向こうへ離れる。「潮が―・く」
㋑元のような状態にもどる。「水が―・く」「熱が―・く」
㋒うせる。なくなる。「痛みが―・く」「血の気が―・く」
㋓縁を切る。関係を断つ。「事件から手を―・く」
㋔引退する。「現役を―・く」「舞台を―・く」
㋕(俗語)相手に関心や興味を持たなくなる。相手から気持ちが離れる。「これを口にすると女性が―・く」→どん引き
6 強く押し当てたものでこする。
㋐(ふつう「挽く」と書く)のこぎりや鉋(かんな)で切ったり削ったりする。「のこを―・く」「ろくろで―・く」
㋑(ふつう「碾く」と書く)ひき臼(うす)を回して穀類をすり砕く。「豆を―・く」
㋒(ふつう「轢く」と書く)車輪が人や動物を押しつけて通る。「自動車に―・かれる」
[可能]ひける
[動カ下二]「ひける」の文語形。
奏でる(かなでる) 奏する(そうする)  ⇒類語辞書で詳しい使い方を調べる
爪弾く(つまびく) 囃す(はやす) かき鳴らす(かきならす) 弾ずる(だんずる)
[下接句]後(あと)に引けない・後を引く・一髪千鈞(せんきん)を引く・糸を引く・尾を引く・陰で糸を引く・気を引く・心を引く・潮が引く・袖(そで)を引く・体(たい)を引く・血を引く・血の気(け)が引く・杖(つえ)を曳(ひ)く・手を引く・手薬煉(てぐすね)引く・鼠(ねずみ)が塩を引く・人目を引く・棒を引く・幕を引く・満を引く・身を退(ひ)く・三度(みたび)諫(いさ)めて身を退く・目を引く・湯を引く・弓を引く・我が田へ水を引く



インフルエンザは「かかる」、風邪はなぜ「ひく」?
2013/1/15 6:30日本経済新聞 電子版
 寒い日が続くこの時期、インフルエンザの予防にとマスクを着けていると逆に「かぜをひいたの?」と聞かれることが多い。テレビでは「かぜをひいたら○○」といった、かぜ薬のCMの回数が増える。私たちにとって「かぜ」はとても身近な病気だ。そこでふと思ったのが、なぜ「かぜに罹(かか)る」と言わずに、「かぜをひく」なのか。語源を調べてみた。
■ひくのは風が運ぶ「邪気」
インフルエンザとかぜ、症状は似ているが…
 国語辞典でかぜの項を引いてみると、「主にウイルスによって鼻・のど・気管などがおかされる炎症性疾患の総称。せき・くしゃみ・鼻水・鼻づまり・発熱・頭痛などの症状があらわれる。感冒」(明鏡国語辞典第2版・大修館書店)とあった。ひとくちにかぜといっても症状は様々で、医師の中には、かぜというのは病名ではないという人もいる。
 かぜの語源を日本語源大辞典(小学館)で調べると、吹く風と同じだった。それによると、古代中国で風は大気の動きであるとともに、人の肉体に何らかの影響を与える原因としても考えられていたという。このことから吹く風が運んでくる「邪気」を体の中に引き込んでしまうと、かぜという病になると考えられた。だから、「かぜをひく」というわけだ。
■病としての意味は平安時代から
古典文学に登場する「かぜ」の用例
吹く風の意味で使われている例
古事記(712年) 狭井(さゐ)河よ 雲たちわたり うねひやま 木の葉さやぎぬ かぜ吹かむとす
万葉集(8世紀後半) わがやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕かも
病気のかぜの意味で使われている例
竹取物語(9世紀後半~10世紀初め) かぜいと重き人にて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももをふたつ付けたるやうなり
宇津保物語(10世紀後半) 「かぜひき給てん」とてさわぎ、伏せたてまつり給つ
 「ひく」という言葉を使う理由は分かった。だが、もともと吹く風を意味した言葉が、日本でいつごろから病としても使われるようになったのか。
 8世紀後半の万葉集には吹く風としての用例がみられる。
 「わがやどの いささ群竹(むらたけ) 吹く風の 音のかそけき この夕かも」(大伴家持)
 病の意味でも使われるようになったのは平安時代。このころに中国からの移入があったのではないかという説が有力だ。
 竹取物語にはこんな場面がある。
 「からうじて起き上がり給へるを見れば、かぜいと重きひとにて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももをふたつ付けたるやうなり」
 かぜが病気として登場する箇所だ。これをみると、当時のかぜは、せきや寒気といった症状だけでなく、下痢、腹痛などの腹部症状、麻痺やてんかん発作などの神経症状まで含んでいたことがうかがえる。
■意外に多い「風」が付く病名
 かぜを風病(ふびょう・ふうびょう)と発音するようになったのもこのころから。鎌倉時代になると、からだに悪い影響をおよぼすことから風に「邪」の字をつけて、「風邪(ふうじゃ)」と呼ぶようになった。この風邪を「かぜ」と読むようになったのは明治時代だ。
 ところで、日本には風の字が付くケガや病名が多い。例えば、破傷風、風疹、痛風、中風……。脳卒中の俗語である中風はまさに「風に中(あ)たる」と書く。昔、かぜが麻痺の原因になると考えられていた名残だという。
■インフルエンザの語源は「星の影響」
 冬の時期、かぜに似た症状で、気を付けたいのがインフルエンザだ。
 インフルエンザの語源はラテン語の「影響」に由来し、何の影響かといえば「星の影響」だ。16世紀に、イタリアではこの病気の原因が分からず、占星術師などが惑星の並びによって汚れた空気が広まって起こる病と考えたことによるそうだ。
 2月3日の節分を過ぎれば、春遠からじ。みなさん、かぜなどひかぬよう、お過ごしください。

(川鍋直彦)